酪農と獣医師を両立する

第1号(2017年7月発行)

酪農家・獣医師

笹崎真史さん 〔八千穂小・八千穂中卒 29歳]

納得のいく働き方は自分でみつける

 笹崎さんは、酪農家であり、獣医師である。ジャージー牛など100頭を飼育する実家の牧場を継ぎ、佐久地域の牧場で飼育される牛の獣医師として地域を飛び回る。酪農と獣医師、この2つを両立しているのは全国的にも珍しいが、実は父親の善治さんがずっと歩んできた道。笹崎さんにとって、同じ働き方を選ぶことはとても自然だったという。

 

 北海道の大学で獣医学を学び、2年間獣医師として働いた後、27歳のときに佐久穂町に戻ってきた。「自分が年を重ねた時、どんなふうに暮らしているのか想像してみたんです。地元を離れた土地で組織の中で雇われて働くのか。それよりも、親やこれから築く家族がそばにいる環境で、納得のいくは働き方を自分で見つけたいと思った」そんな考えが、佐久穂町へ戻ってくることを決意させた。

 

2つの専門性を武器に

 獣医師の資格を持っていることで、飼育する牛の不調に早く対処できるのはもちろん、人工授精などの繁殖についてもより主体的に働くことができる。地元だからこそ、働き方を模索する余裕も持つことができた。

 一方で、牛の獣医師にはシビアな面も。「ペットであれば、少しでも長く生かすことが目的ですが、酪農は違います。病気を治しても出荷できる乳が出なくなれば、生かし続けることはできない。獣医師に求められるのは、経済性の復活です」と笹崎さん。

 

 酪農家も獣医師も不足している今、2つの専門性を身に付けた者としてできることは何か。「相手にしているのは生き物。いつ何があるか分からない。24時間いつでも駆け付けられる獣医師としても、経済を支える酪農家としても、この地域でしっかりやっていきたいですね」(笹崎さん)